ていふうは定風波
莫聴穿林打葉声
何妨吟嘯且徐行
竹杖芒鞋軽勝馬
誰怕
一蓑煙雨任平生
料峭春風吹酒醒
微冷
山頭斜照却相迎
回首向来蕭瑟処
帰去
也無風雨也無晴
※日本で一般に読まれている本文によります。
書き下し文
聴く莫かれ 林を穿ち葉を打つ声
何ぞ妨げん 吟嘯して且つ徐に行くを
竹杖芒鞋 軽きこと馬に勝る
誰か怕れん
一蓑の煙雨 平生に任す
料峭の春風 酒醒めを吹き
微かに冷ゆ
山頭の斜照 却って相迎ふ
首を回らせば 向来蕭瑟の処
帰り去なん
也た風雨無く 也た晴れ無し
現代語訳
林を突き抜け葉を打つ雨音など聞くまい。詩を口ずさみながらゆっくり歩けばいい。竹の杖とわらじは馬より軽い。誰が怖がろう——蓑一枚で、煙る雨も一生に任せる。肌寒い春風が酔いをさまし、すこし冷える。山の端の斜めの日が、かえって迎えてくれる。ふり返れば、さっきまでの風雨の場所——もう帰ろう。そこには、もう風雨もなく、晴れもない。
原文と書き下し文の対照
莫聴穿林打葉声 ― 聴く莫かれ 林を穿ち葉を打つ声
何妨吟嘯且徐行 ― 何ぞ妨げん 吟嘯して且つ徐に行くを
竹杖芒鞋軽勝馬 ― 竹杖芒鞋 軽きこと馬に勝る
誰怕 ― 誰か怕れん
一蓑煙雨任平生 ― 一蓑の煙雨 平生に任す
料峭春風吹酒醒 ― 料峭の春風 酒醒めを吹き
微冷 ― 微かに冷ゆ
山頭斜照却相迎 ― 山頭の斜照 却って相迎ふ
回首向来蕭瑟処 ― 首を回らせば 向来蕭瑟の処
帰去 ― 帰り去なん
也無風雨也無晴 ― 也た風雨無く 也た晴れ無し
鑑賞
雨を恐れず歩き、酔いから覚めて山の夕日に迎えられる。ふり返れば、風雨も晴れもない——心が落ち着いたあとの風景です。
日本で親しまれる理由
「回首向来蕭瑟処、帰去、也無風雨也無晴」
語句
- 芒鞋
- わらじ。
- 料峭
- 春先の肌寒い風。
- 也無風雨也無晴
- もう風雨もなく晴れもない、という心境の句。
作者
蘇軾の生涯と作品一覧は作者ページへ。
作られた背景
蘇軾が謫居中、途中で雨に遭いながら詠んだ「定風波」。逆境を恐れぬ気概と、その先の平静がひとつになっている。