せきごうのり石壕吏
暮投石壕村
有吏夜捉人
老翁踰牆走
老婦出門看
吏呼一何怒
婦啼一何苦
聴婦前致詞
三男鄴城戍
※日本で一般に読まれている本文によります。長編のため、有名な部分を抜粋して掲載しています。
書き下し文
暮れに石壕村に投ず
吏有り 夜 人を捉ふ
老翁 牆を踰えて走り
老婦 門を出でて看る
吏の呼ぶこと一に何ぞ怒れる
婦の啼くこと一に何ぞ苦しき
婦の前みて詞を致すを聴くに
三男は鄴城に戍る
現代語訳
夕方、石壕村に宿をとると、役人が夜になって人を捕らえに来た。老人は塀を越えて逃げ、老婆が門に出て応対する。役人の怒鳴り声の激しさ、老婆の泣き声の苦しさ。——「三人の息子はみな鄴城の守りにやらされました。一人からは手紙が届き、二人は最近戦死しました。生きている者もどうにか生きているだけで、死んだ者はもう戻りません。……」夜がふけて話し声が絶え、すすり泣くような声が聞こえる。明け方、旅路に向かうと、見送るのは老人だけだった。
原文と書き下し文の対照
暮投石壕村 ― 暮れに石壕村に投ず
有吏夜捉人 ― 吏有り 夜 人を捉ふ
老翁踰牆走 ― 老翁 牆を踰えて走り
老婦出門看 ― 老婦 門を出でて看る
吏呼一何怒 ― 吏の呼ぶこと一に何ぞ怒れる
婦啼一何苦 ― 婦の啼くこと一に何ぞ苦しき
聴婦前致詞 ― 婦の前みて詞を致すを聴くに
三男鄴城戍 ― 三男は鄴城に戍る
鑑賞
作者は一言も意見を述べず、見聞きしたことだけを淡々と記します。だからこそ戦乱に引き裂かれる民の悲劇が迫ってきます。(冒頭部分の抜粋)
日本で親しまれる理由
戦乱の民衆を描く社会詩
語句
- 投
- 宿を求める
- 吏
- 役人
- 戍
- 国境などを守る
作者
杜甫の生涯と作品一覧は作者ページへ。
作られた背景
乾元二年(759年)、安史の乱の中の作。「三吏三別」と呼ばれる連作の一つ。